完成時に行う気密測定は意味がないのか??
目次
完成後の気密測定の必要性
コストがかさむことから「完成後の気密測定は必要ない」という意見もありますが、本来、気密測定の目的は住宅の最終的な品質を確認し、省エネや快適な生活環境を確保するためであることを考えると完成後の気密測定も大事なポイントの一つと言えます。本記事では、完成後の気密測定が住宅性能にどのように影響するかを詳しく解説します。
完成後の気密測定の意義とは?
住宅の施工品質を数値で確認し、快適性と省エネ効果を確保
気密測定は、住宅の気密性を数値化し、室内と外部の空気の流出入を制御するための重要な手法です。完成後の気密測定は、最終的な住宅の気密性能を把握できるというメリットがあります。配管・配線や器具取付などの仕上げ工程で生じた隙間は、完成後でないと分からない部分があります。
完成前の測定と完成後の測定の違い
工事の途中で計測する中間時測定は現場の配管・配線まわりや壁・天井・床の取り合い部分などのすきまの特定がしやすく、テープなどで気密改善しやすいというメリットがあります。一方で完成後の測定をすることで以下のようなポイントがカバーされます。
中間時測定後に発生したすきまの確認
中間時測定後のタイミングで電気配線やダクト設置を追加でする場合、その施工の影響を完成後の測定で検出できます
最終性能の確認
完成後に気密性を測定することで、住宅の最終的な性能を把握でき、施工品質を施主に説明することができます。また、中間時測定と比較して完成後測定は換気口の目張りが難しくなるため一般的に、中間時測定よりも完成後測定の方が結果が悪くなる傾向にあります。完成後測定でなお良い気密性能を証明できれば、施主の安心感にもつながります。
気密測定の数値の見方
ここでは簡単な解説をします。詳しくは各項目ごとのコラムをご覧ください。
C値とは?
C値は、1㎡あたりの隙間面積を示し、数値が小さいほど高気密であることを示します。一般的にC値1.0以下が目安とされ、高性能な住宅とされています。
αA(総相当隙間面積)
αAは、住宅全体での総隙間面積(平方cm)を示します。C値はこのαAを住宅の延床面積で除した値となるため、C値と同様、数値が小さいほど住宅全体の気密性能が高いことを表します。
n値とは?
「n値」は隙間を通る空気の流れの性質を表す数値で、1〜2の間で変動します。
- n=1に近い場合:隙間が微細で安定した気密施工がなされている
- n=2に近い場合:大きな隙間が存在し、気密施工の改善が必要
n値が1~2の範囲外であれば、測定条件に異常があった可能性もあるため、再測定が推奨されます。これらの数値を用いることで、施工が設計通りに行われたかどうかを客観的に判断できます。
これらの数値を確認し、中間および完成後の測定結果を比較することで、住宅会社は設計通りの気密性が確保されているかを判断できます。また、C値は施工全体の品質指標として、αAやn値と合わせて参考にすることで、総合的な気密性能を評価できます。
また、気密性能についてはこちらのコラムでも詳しく解説しているので興味のある方はこちらもご覧ください
完成後の気密測定で確認すべきポイント
完成後の気密測定は、最終的な住宅性能を確保するための重要なチェックポイントです。以下のような点を確認することで、施主や住む人にとって快適で省エネな住宅を提供できます。
高気密による省エネ効果 | 気密性の高い家は冬や夏の冷暖房の効率が上がり、エアコンなどの光熱費の削減につながります。施主にとって長期的なコスト削減になるだけでなく、施工業者としても高い気密性能を提供できることは大きなアピールポイントです。 |
快適な生活環境の提供 | 高気密の住宅は外気の影響を受けにくく、室内の温湿度が安定します。また換気システムも効率化します。これにより、季節を問わず快適な室内環境が維持され、居住者の満足度が高まります。 |
施主への信頼性向上 | 完成後の気密測定の結果を施主に提示することで、設計通りの性能が実現されていることを数値で示すことができ、施工業者としての信頼性を高めることができます。 |
まとめ
完成後の気密測定は、住宅の性能を最終確認するために不可欠なプロセスです。確かに費用がかさむことはデメリットですが、中間時と完成後の測定を組み合わせることで、施工品質を高め、住まいの快適性や省エネ性能を施主に保証できる信頼の高い家づくりが実現します。気密測定器の導入に関心がある方は、ぜひこちらもご覧ください。